3歳児神話よりも3歳までの「心を育てる」ことが重要
3歳児神話に合理的根拠はないが、乳幼児期は心を育てる大切な時期
「3歳児神話」は何十年も前から語り継がれてきた。3歳頃まで「母親が」育てないと、子どもの成長に悪影響が出るという考え方である。
平成10年版の『厚生労働白書』では、3歳児神話は「合理的根拠がない」とされている。これらの報告書などの結果、現在では3歳児神話は根拠がないとされている。とはいえ、3歳までは人間の心の発達にとって非常に重要な時期である。
赤ちゃんの頃は、養育者から「マザーリング」(母親のような愛情やスキンシップ)を受けることで信頼感が生まれ、他人や自分、自分のいる場所を信頼できるという「基本的信頼感」を獲得する。
さらに、1~2歳になると、子どもは自分から外の世界に飛び出して、興味のあるものを見たり触ったりしたがるようになる。それと同時に、それまで密接に接していた養育者から離れ、「分離不安」を感じるようになる。
たとえそのような不安を感じても、いつも温かく見守られ、不安な気持ちが「安心」に変われば、子どもは分離不安を克服し、集団生活に溶け込むことができる。
幼少期の不安は、その後の人生にも影響を及ぼす可能性が高い。
このようなニーズや不安に、3歳頃まで十分に対応できないとどうなるのだろうか。
赤ちゃんが発するサイン(泣く、ぐずる、笑うなど)に反応しなければ、先に報告したような「基本的信頼感」を獲得できず、他者や環境、さらには自分自身さえも信頼できなくなる。この基本的不信感を払拭できないと、その後の対人関係や社会生活に影響を及ぼす。
また、養育者に対して強い分離不安を経験すると、その後の人生で信頼していた人たち(友人、教師、恋人、上司など)に対しても同じような不安を表すことがある。その結果、「自分だけを見てほしい」「自分のそばにいてほしい」と相手を束縛したくなる人もいる。
対人関係におけるこのような極度の不安は「見捨てられ不安」と呼ばれる。こちらは別途記事に致します。
健全な心は「お母さん的なかかわり」によって育まれる。
「3歳児神話」が示すように、3歳頃までは必ずしも「母親」が育児をずっと担当する必要はない。しかし、この時期の子どもへの「母親の関わり」は、思いやりと愛情、優しさに包まれて育つことができる、とても大切なものである。
働く母親が子どもと共有できる時間は限られている。だからこそ、働く母親は限られた時間を子どもとのふれあいに費やし、穏やかで笑顔あふれる環境で子どもと過ごすべきなのだ。
一方、専業主婦の母親は、子どもと接する時間が長すぎてストレスがたまりがちです。だからこそ、育児にゆとりを持つためにも、リフレッシュする時間が必要なのだ。
また、”お母さん的なかかわり “を持つためには、母親や保育士である必要はない。父親、祖父母、叔父叔母など、子どもの身近な大人も “お母さん的なかかわり “に関わることができる。ぜひ、子どもを抱きしめ、子どもの気持ちに寄り添い、愛情を示してあげてください。そうした関わりが、子どもの心を育て、心を育むのです。